わがままとは
オリーブの実をついに収穫した。黒い光沢のある実が重たそうに垂れ下がっていて、毎日ひやひやしていたのだった。それでもたったのふたつなので気の毒で小枝ごと切り取って母の作った一輪挿しに挿してある。これが嫌味なほど似合っていて憎たらしくなる。一日にできることが本当に限られてきて、ちっとも前に進んでいかない。ぶつぶつ独り言を云ってばかり。やれるだけのことをやり、その上また何かをしなくちゃと考えると頭がゆらゆらして動けなくなる。「夜廻り猫」という漫画にわがままばかり云う猫が出てきて、年老いた夫婦がよろこんでそれに付き合う。ちゃんと猫は仕事をしているのだ。わたしもこれ以上働かなくてもいいとつくづく思う。