食器とは


ボーンチャイナ、甘く懐かしい響き。昼の月のようにぼんやりとした白に薄い灰色の線の入った卵の殻みたいに薄く華奢なコーヒーカップは実家で子どもの頃から使っていて、ひどく野暮ったく思えたがコンソメスープを飲んだ時はなんだかそわそわした。コーヒーでも紅茶でもなく透明なスープがよく似合っていたのだろう。当時コンソメスープはまだ貴重だった。おそらく両親の結婚祝いの品ではなかろうか。最後のひとつになってしまったのでタオルに包んで持ってきた。毎朝これで昆布茶と梅干しにお湯を注いで三杯くらい飲む。気づけば小指が立っている。午前六時、日の出前の空に細い月が浮かんで、瞬く間に雲の流れに飲み込まれた。