啓蟄とは


春一番が吹き荒れた。十三夜の月はまばゆい光を放つ。そして家の北側のお宅の池で物の怪たちが鳴きはじめる。その声のふしぎなこと、夜中に子どもが「ウフフフッウフフフッ」と笑っているよう。まるで恐怖映画。あれこれ調べたら、冬眠から醒めたカエルが一斉に鳴き出したものと思われる。まあこれがうるさいのなんの。怖くて寝ていられません。昼夜逆転してしまったのに、日中はなかなか寝付けない。消化不良。いつもの店はめずらしく閑散としている。マスターも休憩に入った。カウンターに歳の頃の近い三人が並んでぽつりぽつりと世間話をしていると、友だちの家の台所にいるような錯覚に陥る。