贈り物とは
いやでも思い出す。母親の誕生日。実家で祝ってあげたのは随分昔のこと。駅前の古びたスーパーで刺身を数点とカカオ70%のチョコレートを買ってきて食卓を囲んだ。もちろんお金は父親に無心した。ささやかな贅沢に戸惑う素ぶりが気に入らなかった。素直によろこぶことのできない人。かならずケチをつけて自慢話に変換する。仕方ない。慣れっこだ。施設では誕生日プレゼントに派手な歌手もどきのサイン入りポスターなどをもらう。去年、素直に喜んでいたので拍子抜けした。何もわからなくなるということはしあわせにみえる。置いてきぼりのこちらも鈍感にならなきゃ付き合いきれない。