聖典とは
無宗教な人間。仏壇のない家に育ち、墓参りの経験もなく、初詣もしたことがなかった。親戚との付き合いを極端に嫌った父の影響で、祖父母の葬式にも出席していない。しかし小学生の頃、夏休みは禅寺で過ごした。座禅も般若心経も作務も、堅苦しくない程度の精進料理にも、食べ終わった三枚重ねのお椀にお茶を注ぎ沢庵で汚れを落として飲むことにも苦痛を感じなかった。毎日、安倍川の上流で川遊びをした。全国各地からやってきた年上の人たちと昼夜を共にするのは好奇心を刺激された。先日、仕事で親鸞の「教行信証」を調べていて、俄然すべて読んでみたくなった。つまるところ野や山を駆け回るどころか、都会を歩き回ることすら困難になった今、漢字に埋もれているのがたのしい。高校の時、一番好きな科目は漢文だった。