見守るとは


蝉が一斉に鳴き出した。ミンミン蝉も油蝉もニイニイゼミも一緒くたになって声を張り上げている。地獄の暑さがひと段落した途端の大合唱は物悲しい。あいつが四日ぶりに顔を見せた。カリカリの皿が空になっていたので補充して、そうそう水も取り替えなくちゃと風呂場のドアを開けると黒い尻尾が見えた。どこで見ていたのか、入れたと同時に食べに来るとは。慎ましく毛づくろいをし、窓の下からこっちを見上げて訴えかけてくるが、そうはいかない。左耳の先に切れ目が入れられ桜の花弁みたいになっている。それは地域猫として避妊手術をした証拠、あいつは雌だった。なにはともあれ地元のボランティアさんたちに見守られているのだ。ほっとした。