どん底とは
眠ったのは数分のような気がする。神経が毛羽立っているのに全身麻痺の感覚。ぐずぐず日の出を待つ。五階の窓から見慣れた山や集落が見えた。熱い湯に沈んで汗をかき、無料サービスの野菜ジュースで始動体制に入る。苦心して庭で採ったブルーベリーを冷凍庫から出して朝食。予定より早めのチェックアウト。電車は藍色の海岸沿いを西へ。折れた日傘をさしてよろけていては始まらない。駅ナカで代わりを探し、バスで川を渡って母のところへ着いた。暑苦しい部屋で一人遊びしている白髪のふしぎな生きものはなんとか自分を取り繕う。簡潔に片付いているかに見えるが抽斗の中身はちり紙とゴミ屑。帰りの高速バスが渋滞。長い旅は闇夜に終わる。