冷徹とは


うれしいと素直に思えない。あいつは夜の7時前にひょっこり顔を出した。生きていてくれたのはいいが、一日12時間以上も一緒に過ごしていたのに、どういう心境の変化なのかわからない。がつがつ食事をしてプイッと出て行った。裏切られた気がした。虚しさと不可解な苦々しさに胸がつぶれそうになる。もう待つのはやめる。気が向いた時に寄ればいい。心を落ち着けて冷静にならなくては。あいつはたったひとりで恐ろしい闇の世界を生きている。今まで以上に警戒心を強めている。ひどく怖い目に遭ったのかもしれない。ねぐらのない渡世人のように毎日がいのちがけなのかもしれない。そう自分に云い聞かせ、平常心を取り戻す。