男と女とは


南東の空低く金星と木星が並んでいる。朝6時、下弦の月は南中を過ぎてビルの向こうに沈んでしまった。『月の満ち欠け』を読んでからずっと心に引っかかり続けている言葉「ちょっと死んでみる」「ずっと待ってたんだよ」佐藤正午氏の隙間のない世界に取り憑かれたようだ。たったひとりぼっちで取り残されたさみしさから逃れられない。7歳の少女と50歳の男の愛、と云うと軽々しいけれど、そこに辿り着くまでの数奇な物語と確実な文体は、何かを超越してしまったようだ。すれ違う男女の恋をこれほど烈しく飄々と書き上げた氏の次回作をひたすら待っています。