情動とは


『ホワイト・ドッグ』1982年を見た。サミュエル・フラーの傑作と云えば『ショック集団』と『裸のキッス』だが、これも恐ろしい傑作だ。黒人だけを襲うように訓練された白いシェパードを轢いてしまった新人女優が犬を家に連れ帰る。そして仕事現場に連れて行くと、おとなしかった犬が突如牙を剥き共演相手の黒人女優に襲いかかる。犬を調教場に預け矯正を始めたものの、脱走した犬は殺人を繰り返す。犬の演技が怖すぎる一級のサスペンス映画。実話というのがさらに恐怖感を煽る。「映画とは戦場のようなものだ」という言葉に象徴されるように、社会に渦巻く闇と闘い続けた孤高の映画監督。その存在はエキセントリックですばらしく力強い。