眉月とは
不幸がつづく。十日ほど前から近所の中華屋に暖簾が出ていない。奥さんがくも膜下出血で入院したそうだ。酒もタバコもやらない気丈な人なのに、社会復帰できる可能性は30%らしい。今日ようやく灯りがついたが、大将ひとりの姿は見ていられない。ぽつねんと椅子に腰掛けている姿に声がかけられない。夜の客はのんべえばかり、しかも付け。こんな商売やってたら間違いなく店は潰れる。奥さんがいないと気詰まりだし、苦痛でしかない。無事を祈る。不吉な赤い月を追いかけ、いつもの店でアカザラ貝の磯焼きを食べた。見た目は小さな赤いホタテ、味はずっと濃厚。サザエのようなミソ。凄まじく混んできたので一杯で退散。帰ってミミコにごはん。