虚飾とは
少しずつ昔の記憶を辿る。正月の風景、好きだった本や画集、夕焼けのベスト3、おいしかった食べ物ベスト10など、ひとり遊びには事欠かない。ついつい夢の中でもひとり遊びをしていて、一時間おきに目醒めては正気を取り戻して胸をなでおろす。力が薄れていく感覚はますます強まり、たった200mを歩くだけでも命がけの気分。若い時に無関心だった指輪やネックレスなど付けるのは、たぶん武装。貧弱な胸元にターコイズを下げ、指輪と眼鏡チェーンと腕時計とブレスレットであらゆる首を締める。話す相手がいないから口がきけなくなり、たまに喋ると呂律が回らない。呆けの始まりを秘かに自覚する。世界はどうしようもなく狭くて広い。