花見とは

ひとりぼっちがふたり、公園に取り残された。ひとりは空しいブランコの音をさせながら、ひとりは桜の下のベンチでビールをのみながら。時折やってくるヒヨドリが花弁を散らして時の流れを知らせる。フランス語で桜は女性名詞だったりするけれど、この大木は絶対に男性名詞が似合う。カロライナジャスミンの黄色、花韮の白とブルー、八重椿の赤、つつじのオレンジ。どうにも薄汚れた景色。さくらを見るのはもうこれで最後にしよう。苦しくてたまらなくなる。狂ってしまった東京の街にひたひたと化物の足音がきこえる。