死と生とは


皆既月食を見るために早寝したのに、夜空は厚い雲に覆われて月明かりさえ漏れてはいなかった。今日はアッパス・キアロスタミ監督『風が吹くまま』1999年。『友だちの家はどこ?』『そして人生はつづく』『オリーブの林をぬけて』のジグザク道三部作と『桜桃の味』どれも好きだが、こがいちばん彼らしい作品かもしれない。イランの片田舎、黄金色に輝く小麦畑の中を走る一台の車、老婆危篤の知らせを受け、村に伝わる珍しい葬儀を撮影に来たテレビクルー、だが数週間すぎても老婆は死なない。主人公は常に顔の見えない相手と会話する。苛立ちをぶつける唯一の小さな友だち(老婆の孫)の言葉が愉快。「学校はひとつだけど道はふたつあるんだ」