密約とは
それはどこか儀式を思わせた。ふたりの間には決して他人が割り込むことのできぬ秘密の誓いのようなものがある。恍惚と悠久、そんな言葉がよく似合う。近所の野良猫はごはんをくれるおじさんにしか懐いていない。朝11時半頃と夕方5時におじさんは大きな荷物を抱えてやってくる。猫が待っている時もあるし、いない時はやさしく「ミミ〜ミミ〜」と呼ぶ。どこからともなくサバトラ猫はやってきて甘え、ブラッシングをしてもらったりする。今日は気になって朝と昼に見に行ったがいなかった。夕方、傘を差したおじさんが大きすぎる洗面器のカリカリ、ペットポトルの水を味わうミミを見守っていた。ひっそりとふたりだけの時が流れている。