河原とは


「どんどん焼きはじゅうよっか〜」と歌ったのは幼少の頃。富士川の河原に数十人の男衆が集まり、正月飾りやだるまなどを積み上げて火を放つ荒々しい祭りごとでした。近所の人たちが三色団子とてっぺんに橙(だいだい)を刺した木の枝をその火で炙って食べていたのを恨めしげに眺めたのを憶えています。我が家ではそういった習慣もなく、ただ遠巻きにぶるぶる震えながら見ているだけでした。いつもこの時期になると、この歌が口をついて出るのが面白おかしいのです。このところひどく体調が悪く、昔のことばかり思い出します。もう帰る場所はないのに。心はいつもあの頃に飼っていた猫たちが眠る河原に取り残されたままです。