黒くて小さな猫とは

もう何年前のことだろう。家から駅までの道にたばこ屋があり、古びたショーケースの上でひなたぼっこをしている猫がいた。毛色や体つきからマティと血縁関係があるのではとしげしげ眺めたものだ。もう店は畳んでしまい、猫の姿も見ることはない。ところが夕方になると隣りの空き家の塀の上に白黒の猫が寝そべり、さみしい声で鳴いている。作りはかわいらしいはずなのに雨風でぼさぼさの毛を舐めるでもなく、ただ通りを行く人々が声をかけてくれるのをたいして期待もせずに置物のようにそこに居続けるのだ。おそらく猫好きなはずの元たばこ屋さんが餌をあげているのではないだろうか。そうならよいが。