寓話とは
久しぶりに映画二本立て。『イルポスティーノ』マイケル・トロイージ監督1994年。ナポリ湾に浮かぶ小さな島の貧しい漁村で暮らすマリオはチリから亡命してきた詩人と出会い、隠喩という表現方法を学ぶことによって退屈だった世界が瑞々しく輝きはじめることを知る。剥がれかけたピンクの壁の家が印象的。実在の詩人ネルーダを演じたフィリップ・ノワレの笑顔が泣ける。『菊豆』チャン・イーモウ監督1990年。染物屋の中庭に原色の反物がはためき、水車小屋のような工房内には染料の桶や池がグツグツと音を立てている。暴力的で救いのない愛憎劇なのに奇妙な静けさを感じるのは不遇な花嫁の忍耐と諦めの境地がその表情に浮かぶからだろうか。