大学ノートとは

青い偽革の手帖。二十歳の頃、いつも持ち歩き通い詰めた喫茶店の片隅でいとおしむように頁を開く。当時書いたコトバは切れ切れに今もそらんじることができる。名曲喫茶だと感情が漏れだすのを堪えココロの内側にあるコトバを一つ一つ拾い出す。ジャズ喫茶ではなぜか無になれて冷徹に目の前の一輪挿しのかすみ草を描写した。貧乏でも一杯250円(曖昧)の苦いコーヒーは決して高くはなかった。禁煙ブームで喫茶店に行く意味も必要もなくなり30年以上経つ。あの隅っこ感はナツメ球を灯したテーブルランプでゆらゆら虫の音や風の音を聴いて取り戻す。あの大学ノートはもう失くした。ちらしの裏に書き殴る日々。はらはらコトバは消えてゆく。

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