ミックとは


空が白みはじめた頃、聞き慣れない鳥の声にドキドキした。そぅっと玄関から盗み見すると、お向かいの自転車の上に大きなカラス。信じ難いが声の主に間違いない。口をパクッと開くと、まるでヒヨドリの物真似でもしてるかのように甲高くピョーピョピョッと鳴いたのです。幼い顔に哲学者の風情を漂わせ、バタバタと飛んでいきました。夕方、洗濯物を取り込もうとして三軒先のお宅の屋根に彼の姿をみつけました。ひとりぼっちで何をみつめているのか、もうあの声で鳴きはしません。誰かの顔に似ているなあと少し考えたらミック・ジャガーでした。ミックは明日も来るだろうか。