嗅覚とは


月の気配に誘われて玄関を出ると十五夜だったのは一昨日。子どもが描いた円のように羞じらいをみせるレモン色の月に吸い込まれてすぅと体が浮く。誰にも見られていないかそぉっと辺りを見回してひとつ息をついた。久しぶりの月はまったく汚れていなかった。引力を体感した、引力だ、と呪文みたいに繰り返す。すこしばかりのご乱心。野菜の高騰でうすら寒い秋、新生姜の甘酢漬けを作る。大袈裟な衣更えはもうちょっと先延ばし。ヒートテックとベロアのスパッツが皮膚の一部だ。