気品とは


今日はおしゃれして出かけよう。その考えは一瞬でかき消された。なにかしようと思ったらすべてを犠牲にしなくちゃ。掃除も洗濯も布団干しもやらなくていい。ずっと欲しかった洗濯石鹸が使いたくてたまらない。つい靴下を洗う。もうだめだ。てのひらに余るほど大きいのにしっくりくるのは資生堂のシンボル花椿マークの形をしているから。なめらかな乳白色、ミロのヴィーナスのような質感、安っぽい香りもない、これで身体も髪も洗いたくなる。それはともかくやめておく、せめてよれよれの服を着替えると明日のごみ出しが頭に浮かぶ。汚れついでに捨てちゃえと袋を探すと10ℓの物しかない。あたふた買い物メモを付けているうちになんだかバカらしくなっちゃった。はまぐりの貝殻で作ったおひなさまがちょこんとテーブルの上。