幽玄とは
桜の森に行ってきた。春雨の後にアマゾン川のように蛇行する川沿いの緑地公園で花見の宴が開かれた。水滴を含んだ満開の桜はみずみずしく枝を垂れ、樹々に囲まれた深遠な空気はうっすらと蜜の香りを含んでいる。男の手料理で彩られたベンチの向こうには別世界が広がっていた。湿り気を帯びた土はふかふかしていて歩くと体が宙に浮いてしまう。子供たちがずっと遠くで跳び回っているのに歓声は聞こえない。とびきりの日本酒を飲み、声が枯れるほどいろんな人と話をした。若者二人がテントを組み立て始めて約一時間が過ぎた頃、麗しい女性が現れる。ここはテント禁止だし、夜の9時には撤収しなくちゃいけない。真っ暗けで解体不可能とみた。ふ、若造め。たのしい夢の中の一日。