浮遊とは


やっと桜の呪縛から解放された。息苦しいほど沢山の桜に取り囲まれて肩身が狭かった。幽霊みたいにひゅるると街をさまよいカウンターの端っこで冷酒を呷る。今日は焼きとん屋で幸せの押し売りごっこに忙しいカップルの会話にこっそり毒づいていて、バスに乗って降りたら驟雨。たまらず目の前の店に飛び込んでやり直し。春の香りの野菜が食べたかったけれど頭が回らない。知らない人たちの顔を眺めているのが新鮮で心地よいのは余計な気を遣わなくていいし、ほんの少し甘えん坊になれるからだろう。面倒くさい日常からとっととおさらばして非日常の街を徘徊するのも修行と云えるかしら。ずうずうしいか。