東洋とは


金木犀がほわんと香る。しょぼしょぼ歩いていると、からだがふわりと甘酸っぱい匂いに包まれていて、ふぃと見上げれば深緑に茂った葉っぱの隙間から少しまぬけなオレンジ色がのぞく。その空間はお便所を思わせて好まないけれど、虫や鳥たちが恍惚としている姿を連想するとやさしい気持ちがツンとおでこをたたく。桂花陳酒はとても優雅なお酒だ。口に含むと咲きはじめたばかりの金木犀の新鮮な香りが鼻に抜け、果実酒特有の甘露な味わいがしばらく舌に残る。ゴールデン街の黒いカウンターに並んだオリエンタルな瓶と、この酒を愛した女性たちの顔を記憶の中へ探しに行く。真四角な白木のテーブルとおだやかな曲線が見えた。