土と暮らすとは
150kmの移動が苦ではなくなってきた。新幹線、高速バス、私鉄特急などあらゆる方法を模索してきたけれど、それは時間でも料金でもないことがはっきりと分かった。何かと云えば体力と余裕だろうか。あからさまに包み隠さず雄大な富士山に迎えられ故郷の駅に降り立つ。今日のスケジュールはきっちり帳面に書き出してある。実家に着いてまずは畑に降りて分葱とルッコラ、庭の柚子と金柑を収穫する。それから家中を雑巾がけ、そして片っ端からゴミを袋に入れていく。集積所に九つの袋を運んだ帰りに目に飛び込んだのはみかん色の満月。空っぽの胸がトクンとした。葱と鰯節の晩餐。