夢の土地とは
行商のおばさんを憶えている。ずしりと重い風呂敷を背負って電車とバスを乗り継ぎ、這々の体で施設に到着。二つの椅子と荷物を部屋に置き、食堂を見回すと柿色の帽子をかぶってにこにこ笑う母の姿がひと際周囲を明るくしていた。キーマカレーとお粥を食べきりご機嫌だ。肌つやもよくなり、手はお姫さまのよう。夢物語を聞きながら衣類のチェックをして日が暮れた。バスを乗り継いで兄の家に辿り着くと事前に調べておいた居酒屋が休みで唖然。兄のカンタン手料理がなかなか立派で驚いたけれど、立て続けに仰天することが起こる可笑しな夜。