陽光とは
嵐の一夜が去り、ようやっと春の陽気になった。宅配便で椿油が二本も届く。母が集めていた応募券を送ったのはほんの数日前だ。今度持っていってやろう。待ち望んでいた身軽な服装で足取りも軽く散歩にでかけた。タイツもコートもぶかぶかだけど気にしない。緑色の三尺をスカーフ代わりに首に巻き、日傘を差すとメリーポピンズの気分。桜は昨日の痛手に身を縮めたまま薄ぼんやりと固まっている。北から南へけやき並木を歩く。何も考えずにぽわんと目に映る風景の中に紛れ込んでいると耳元でささやく声がする。もう帰りたい。明日の朝に処分するミシン二台分の粗大ごみ券を買って帰宅。こたつ布団も洗濯物もふかふかだ。