突然炎のごとくとは
昨日は昇りたての満月を眺めての晩酌。なかなか小粋だった。店内の喧騒も耳に入らず清々しい気分に浸った。それにしてもこの蒸し暑さ、とてつもなく腹黒い作為を感じる。冷房装置のない貧しい人と年金生活者はとっととあっちへ行けという声が聞こえる。ぐるぐる迷走台風が南の方の人たちを苦しめ、列島を舐めるように進むんだろ。ジャンヌ・モローとサム・シェパードが逝ってしまい、アラン・ドロンは引退というさみしさ。彼らの洗練された知性はわたしの呪われた二十代を颯爽と吹き抜けた。「インディアソング」の気だるいハスキーボイスに酔い「フール・フォア・ラブ」の原作を読み、ドロンの真似をして右手の内側に腕時計をはめた。さよなら。