架空とは
ヴィスコンティの「白夜」1957年。マストロヤンニ作品で唯一見逃していた。舞台はイタリアの運河のある街。橋の上で恋人を1年待ち続ける女と彼女に恋をする男の残酷なおとぎ話。まだ無名のマストロヤンニのとっ散らかった見事なダンスに笑う。かまととヒロインの大きな瞳よりも運河に立つ娼婦の流し目の方がリアルで艶っぽい。ちょっと辛口になるのは舞台劇のようだったから。主人公が住む賄い付き寮の寮母さんたちにベストドレッサー賞、オールセットの架空の町をうろつく白い野良犬に最優秀助演賞をあげたい。黒澤の「野良犬」1949年が無性に見たくなる。戦後の闇市、場末の盛り場、すべてロケなのにどこか幻を見ているような世界観。