端麗とは


灯りが必要なのはヒトだけ。あいつ深夜3時に玄関先の闇の中で物思いに耽っている。カリカリでおびき寄せたが頑として背中を向けるので入り口に置いて引き戸を閉めた。しばらくしてこっそり覗くと万年草を枕に眠っている。夜が明けてお向かいさん家の屋根の上で寛ぐ姿には妬ましさを覚えた。朝陽に白く輝いてバレリーナみたいに足をピンと伸ばして身繕いに夢中なお嬢様。どこで遊び惚けたか、20時にひょっこり現れ悪びれもせずごはんを食べ、暗闇に消えた。あいつの瞳には容姿端麗な者だけに与えられた気高さがあり、氷のように冷たい薄緑の光を放つ。昨日あいつが何か云いたげにか細い声で鳴いた。聞き取れないほど切ない声は高く澄んでいた。