よそゆきとは


街には出たくなかった。神輿が出て荒々しい空気に包まれる駅に近づきたくなかった。いつもの店は臨時休業、駅前の焼き鳥屋さんは定休日。家人とメールで何度もやり取りして、駅まで出かけることになる。あらかじめ予約の電話を入れたら人気の居酒屋は外のテーブルしか空いていなかった。ガラス風鈴の濁った音はがっかりだけれど、ビニールシート越しに夜の路地を眺めて飲むのは悪くない。次々追い返される客、しつこく粘る客、傍若無人に出入りする家族、食べ物の話しかしない隣りのカップル、すべてが煩わしくアラ煮を半分食べ残したけれど、蒸し暑さも今夜限り。無理してもお出かけ気分でレースの白いワンピースを着られてよかった。