空白とは


母の絵の生徒さんから葉書が届く。実家のすぐ近所のとても可愛らしいご婦人だ。母は周囲の人に愛されていた。しかし本人にとってそれはどうでもいいことだったように思う。彼女は常に自慢話で100%着飾っていたし、人々に対する愛情を表現することは稀だった。それでも人を惹きつけことができたのは天真爛漫とさえ云える途轍もなく傲慢な人間性が、平和で当たり前すぎる田舎で暮らす真面目な人々には魅力に輝いていたのかもしれない。手紙は実家の庭の侘助が咲いたら絵の材料に欲しいから了解を頂きたいという内容だった。どうぞ遠慮なくお持ち下さいと返事を書いて母の手書きの年賀状を数枚同封した。ひどく疲れて近所の店。店主は喉の手術をして声が出なかった。