遠い記憶とは


花の名前はアベリア。別名は花園衝羽根空木(ハナゾノツクバネウツギ)。この貧乏臭い花は車道の脇や垣根によく植えられていて、これまで名前を知ろうともしなかった。子どもの頃、羽子板遊びの羽根のような小さくて白い花を鼻の頭にくっつけたものだった。何と呼んでいたか憶えていないが、あまり感心しないものだと思う。スベリヒユは「お肉」だったし、ドクダミは「お便所草」で服にひっつくオオオナモミと小栴檀草は「お乞食(オコンジキ)」なのだ。甘い物に飢えていた時代、花の蜜はごちそうだった。いちばん上等なのはサルビア。アベリアは道端に生えていたから学校帰りに蜜を吸ったんだ。