ともだちとは
この家の小さな庭は日が入らない。植木は二階のベランダに移し、後は万年草が蔓延っている。雨や雪が降れば傘をさしてやり、今年の大雪にも負けずに生き延びた強者だ。前の家で玄関先に咲いていた頃は毎日水やりしてたのに、ここは粘土質なので水を撒いたこともない。そんなわけで庭に出ることも土に触ることも少なくなり、カナヘビやオンブバッタと遊ぶこともなくなってしまった。食いしん坊のヒヨドリが縄張りを主張してピーヨピヨ鳴きわめくから米を撒いても雀が来ない。あいつらはベランダの柵に落とし物をしたりして油断ならない。うっかり濡れ縁にリンゴの入った籠を置いたら見事に突っつかれた。友だちがいなくて寂しい家だ。