妖怪とは


日暮れが待ち遠しい。西陽が傾きはじめると白い月を探す。日ごとにぷっくり太っていくお月さんの軌道は広い場所に出ないと見えない。空を仰いでふらふらしている様はさぞかし変な女だろう。昨夜、近所の店で仲良しの小学1年君に「なんでそんなにガリガリなのに手が大きいの?」と責められた。ふん、子どもは残酷なもの。「これは百姓に生まれたからだよ」と答えようと思ったけれど、たぶん伝わらないからやめた。すっかり体重で追い越されている子ども相手にムキになっても阿呆らしい。彼の目には巨大な手をもつ妖怪が映っているのだろう。いつまで可愛い声でいてくれるかしら。