行事食とは


旬の物を食べる。そんな贅沢はもう自分ではできなくなった。近所の店は冬至の日にはかぼちゃ煮などを用意していてほっとする。正月の松前漬けが残ってしまったのか、先日はお通しに出てきて驚いた。店主は始末のできる人で、選び抜いた食材で工夫した料理を良心的な値段で提供する。見栄など一切なく、手軽なものから天然物の魚介まで、その日のおすすめを眺めているだけでたのしい。常連さんが黒板の文字を巧くなったと褒めていたけれど、たしかに字は人柄を表す。習ったわけじゃないのに、丁寧にきちんと揃えられた文字からはうそ偽りのなさが見て取れる。繁盛してくれたらいいけれど、無粋な客に押し寄せられても困る。