夫婦善哉とは


正午すぎ、何かに駆り立てられて家を出た。駅前のパン屋で焼きたてのイギリスパンを買ってよろよろ電車に乗る。膝の上が熱い。開いたままの袋から蒸気が上がってきた。居眠りをする間もなく到着。外国人向けの格安ランチメニューの看板が目立つにぎやかな通りを過ぎ、さみしい路地に入ると「はち」の赤ちょうちんが見えた。差し入れのパンを渡して得意気な小学生の顔になる。名物カレーのっけ焼きそばはどだい無理な注文。挽肉とコンニャクの甘辛煮だけもらって生ビール。小皿にカレーとパンのサービス。先生が笑みを浮かべる答えを発表した時みたいに鼻を膨らませてがつがつ頬張る。甘くてしょっぱくて切ない。なぜか雪国のとり飯弁当に似ていた。正直でさり気なくバランスのとれた味。夫婦で共稼ぎ、二人の子育て、がんばれ。