ゴールド・シルバーとは


その猫は左右の目の色が違った。オッドアイと云うそうだが、もちろん当時は知る由もない。尻尾の短い貧相な猫にゴールド・シルバーという仰々しい名前をつけたのは誰だったのか。呼び名はシルバー。彼女はわたしがいちばん最初に出会った猫でやさしくおっとりとした性格にいつも慰められた。ある日、ふらふら山に入っていくのを追いかけて行くと、狂暴なオスが激しい怒りをあらわにして向かってきた。あの形相は忘れない。恐ろしくて動けず、殺されると感じた。それほどわたしは幼かった。彼女は何度も妊娠したがどれも死産で、ようやく産まれた一匹は少し足が悪く、消え入りそうにおとなしく存在感の薄い猫だった。彼の名前はムンク。