無邪気とは


あいつの姿が見えない。台風やら夕立やら、このところの雨続きでどこかに避難しているのか。うちにはお盆でマティとグイドが帰ってきているから遠慮しているのか。地域猫として避妊手術をされたぐらいだから、心やさしい人が世話を焼いているに違いないと思うことにする。そうでないとこちらがやりきれない。青柳いづみこ著『無邪気と悪魔は紙一重』をぱらぱら読んでいろんなことを忘れる。小説やオペラに登場する男を破滅に追いやる「宿命の女(ファム・ファタル)」たちの本性を徹底的に分析するエッセイ集。男がいくら悪女だとうらみつらみを述べ立てようが、いくら女を崇拝しようがちゃんちゃらおかしいことが多いと云う作者の文章は爽快だ。