喪中とは


昨日から黒い服を着ている。マティがいなくなって三年。暮らしぶりはすっかり変わった。気の強い彼女と一緒にいれば、なんにも怖くなかった。今は虫の気配や風がカーテンを揺らす微かな物音にも怯える。近隣の蛍光灯は無言の圧力、ずんずん内部に侵食してきて息苦しい。70歳を超えたおばちゃんたちの井戸端会議や粗雑な怒鳴り声や子どもの愚図る声も時々聞こえる咳払いもやかましい。私道の路地は共有の空間だから文句を云う筋合いじゃないけれど、ほぼ一日中荒っぽい物音や乱暴な声がしていると神経が細る。鳥の声だけが聴こえてくる午前中のひと時だけがやさしい時間。マティのキョトンとした十三夜月みたいな眼を思い描く。元気ですか。