ミューズとは
ある日突然、カセットテープを聴きたくなった。面倒なのでCDとラジオ専門だったけれど、レコードだってかけられる一万円のミニコンポは優秀だ。入れっ放しだったロッテ・レーニャの「三文オペラ」を取り出し、ギルバート・オサリバンのテープを入れたら谷山浩子の声、続いて杉田次郎、35年前に録音したと思われる。くすくす可笑しくなって胸に沁みた。それからずっと鼻歌は二人の曲。普段まったく音楽を必要とせず、無音で過ごすのが好きなのに、ふいっと心を持っていかれてしまう。聴き流すことができない。何も手に着かなくなってしまう。すごい力だな。