他人の顔とは


こげ茶色のカーペットの上に白髪が1本光っていた。つまみ上げてみるとそれは奇麗で見飽きない。米を炊いて塩鮭を焼いて蒲団を干して洗濯をして掃除をして気がつけば白髪のおばあさんというわけか。玄関先を箒で掃いていると今がいつだったかわからなくなる。ぽっかりと空白の谷間に落っこちて声も出ない。明日は友人に付き合って山梨へ一泊するので準備に手間取る。洋服選びがむずかしいけれど、できるだけ簡潔にするのがいちばん。身軽にいこう。どこで何をするのか、まったく知らない。車の助手席に座っているだけだ。やれやれ。