生還とは


あいつが帰ってきた。夜中に荒々しい猫の鳴き声を聞き、急いで風呂場の窓からのぞくと夜の闇に逃げ込む黒い尻尾がみえた。もう捨てようと思っていたカリカリがなくなっている。違う猫かもしれないと期待しないでいると、昼すぎにちゃっかり窓の下で寛いでいた。あのダミ声はあいつなりの挨拶で、お盆を遠慮していたと思うといじらしくなる。へこんでいたお腹がふくれるほどたっぷりごはんを食べさせた。三年ぶりにペットショップへ行き、注意深く平静を装いフードを選ぶ。ポイントカードは捨てちゃったけど、いくらでも食べていいよ。涼しくなったから段ボールで寝床をつくってやらなくちゃ。