シーレとは
正午前、宅配便が届く。昨日、母の納骨に来てくれた奥さんから電話があり、母の描いた猫の絵を持っているのだけどこれはあなたが思い入れのある猫だろうから送りましたとおっしゃる。シーレは35年くらい前わたしが生まれ育った家に拾われたやせっぽちの黒猫で確かわたしが名付け親、一人娘の節子(三岸)を産み、父の退職を機に庭とアトリエのある家に引っ越した。その際、行方をくらまし皆が諦めて出発するのを差し止め、やっとこさ探し出して新しい家に連れてきた。お頭の弱い節子は一晩中書き物をする文机の上にちょこんと座っていたし、シーレには必ず腕枕を要求された。包みを開くと春の庭にいるシーレの絵が白い額に入っていて少し驚く。母の絵をあまり評価しないようにしてるが、これにはやられる。