游泳とは
九月の終わりの日にコケる。玄関で鍵が開けられず七転八倒したらしい。大切な万年草が一部へこんでた。近所の店が大入り満員で、顔見知りのご夫妻に相席したのが敗因。明るく会話に勤しみワラビの醤油漬だけでぐびぐびやってしまった。右肩と左太ももを打撲、いまだに腕に力が上がらない。頭と顔が無傷なのはいいとして反省しようにも記憶がない。性懲りもなく暗くなると駅まで散歩。青唐辛子と早生みかんを買ってやさしい人たちの顔を見に行く。もういい加減ワガママに生きていいだろう。丑三つ時、中秋の名月は流れる雲の中をしなしなと泳いでいた。時折り黄金の光をばら撒いて、じれったくなるほど幽雅な黒い夜。