どん底とは
しずかに暮らしたいだけなのに、貧民窟は一日中わさわさうるさい。向かいは野菜引き売りの老夫婦とどら息子と娘、朝四時から目刺しを焼く。はっと気づくと部屋中油臭くなって気が狂う。六時にけたたましく市場へ出かけ、十一時に戻ると外で喧嘩しながらの作業が続く。右隣りは3歳の娘のいる一家。この悪魔がこまっしゃくれていて恐竜みたいに騒ぐ。二階でドンドンダンスはやめてくれ。家にいるだけで疲弊する。新しい生協の配達員の元気すぎる声がうとましい。玄関の中まで入り込むのはルール違反。配達料を払うのだから勝手に置いて行ってくれたまえ。そしてこの一帯は常に窓も開けられないほど生活臭が漂う。ボディーソープがたまらん。