水の底とは
きんぎょは眠る。尾っぽが揺れるのは、きっと壮大な夢の中で泳いでいるんだろう。時々ふるえているのは、きっとへたくそな踊りをとがめられているんだろう。あれ、もう11月。一日はとても長いのに、一年は早いものだね。きんぎょがイカれてから十日がすぎた。そろそろいつものきんぎょに戻ってもらわないと困る。ま、もともと愚図なおんなだから期待はしないけど。それよりあの新入りがあたしの夜食を食べちゃうの、白いブサイクなやつ。きっとチャイの子どもだよ。ほうきみたいな尻尾がそっくり。目つきもそっくり。うらぶれてるね。あたしの自尊心がゆるさないんだけど、きんぎょがせっせとごはんをあげちゃうの。バカなおんなね。