にんじん嫌いとは


高校生だったけれど、はっきり何年と思い出せない。母が子宮筋腫の手術で入院し、父と二人で何日か過ごした。父は晩酌をしていたので米を炊いた記憶はないが、おかずは玉ねぎのスライスにツナ缶を乗せて醤油をかけるだけ、これだけで充分だった。ある日、近所に住む叔母がチューリップの唐揚げを届けてくれた。父が頑なに断ったのが懐かしい。叔母はさぞかし腹を立てたろう。この人の料理は教科書通り、盛り付けもレストラン風でうちの食卓とはかけ離れていた。ずっと昔、人参の千切りを白菜の漬物で巻いた物を持ってきたことがあった。母親に無理矢理食べさせられて飲み込めずにトイレに吐き出した。あの不味さは未だに忘れられない。