節分とは


「豆まいて〜」子どもたちに特別に許された夜のパレード。白い息を吐きながら小さな集落を一軒一軒回り、用意された心ばかりのお菓子をもらって歩いた。気前のいい家では袋入りの菓子をまいてくれた。十数軒回り、ひと月分のおやつを手に入れて満足したものだ。色褪せてほころびた記憶には、赤鬼も青鬼も登場しない。ただ、気弱でお人好しな笑顔とちびっ子たちの傲慢な鼻息の荒さと粗末な駄菓子が当時の貧困を思い出させる。東京の焼き鳥屋では飽食の若者たちが熱と煙りに包まれてお上品に語り合う。どこか空々しさを感じるのは見回してもすました顔ばかりで、酒に酔った人がいないから。彼らは皆、おいしい食事をしに来ている。